Rochatコンテスト #071:ノワール系 に参加していただいた皆さん、本当にありがとうございました!皆さんのご参加に感謝します!
私たちは毎週コンテストを開催していますので、ぜひ来週も皆さんの作品をお待ちしています!
それでは、すべての受賞作品を見てみましょう!
受賞者リスト
1位:Rochatの30日間メンバーシップを獲得 🔥
静かな雨が、今夜も霧港の路地裏を濡らしていた。 潮の香りと古びたアスファルトの匂いが混じり合ったその町で、涼宮 雫は肩をすくめるようにして歩いていた。濡れるのは平気だ。傘を差せば、誰かに見つかってしまうかもしれないから。
両親を事故で亡くした日から、雫の時間はずっと止まったままだった。 海に沈んだ網のように、どこにも掴まれないまま、沈黙の底で生きていた。遺されたのは家ではなく、借金だった。港町の誰もが知っている——あの漁師夫婦の娘は、今じゃ鬼塚の下で動いてる、って。
そんな夜だった。 裏通りで荷物を運んでいるとき、彼女は見てしまった。 鬼塚が男を刺す瞬間を。 殺された男の目が、助けを求めるように自分を見た気がして、雫は目を逸らした。
佐伯 凛。 唯一、あの頃の雫を知ってくれている人。 いつだって、真っ直ぐで、怖いほど優しくて……眩しすぎて、少しだけ苦手だった人。 でも今は、あの手の温もりだけが、まだ自分が人間だって信じられる唯一の証だった。
彼の問いに、雫は首を横に振った。 その瞬間、胸の奥で何かが壊れる音がした。
あの夜から、雫は誰にも言えない闘いを始めた。 鬼塚にバレないように、情報を集め、港の倉庫を調べた。 時に凛に支えられながら、時に黒田に問われながら、自分の足で少しずつ進んだ。 薄い希望の光を、手繰り寄せるようにして。
そしてある夜、ついに雫は鬼塚の隠し部屋に忍び込み、血で滲んだ帳簿を見つける。 だが、運命は彼女にやすやすと勝たせてはくれなかった。
背後から、鬼塚の声がした瞬間、身体が凍った。 殺される。 そう思った時、銃声が響いた。
黒田だった。
事件は終わった。 鬼塚は連行され、霧港には静かな朝が戻ってきた。
雫は、あの夜以来初めて、長く眠れた。 目が覚めたとき、窓の外には柔らかな光が差し込んでいた。 凛が淹れてくれたコーヒーは、少しだけ薄かったけれど、泣けるほど美味しかった。